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風景にはかなわない建築

 再放送の放映も終わったので、番組宣伝ではなく、改めて考えたこととして『京都画報』について。今回は、古い建物を活用したホテルというのがテーマ。老舗料亭(京大和)の修復をして、それを敷地内に抱き込んで新築したパークハイアット。任天堂の本社・住宅だったアールデコの建物をホテルとして蘇らせた丸福樓。五条楽園の遊郭をコワーキング+宿泊の施設として再生させたunknown(六録楼と同じエキスポの改修設計)。廃校になった清水小学校をホテルとして蘇らせたホテル・ザ・青龍の4つです。

 撮影現場のモニターごしに見ていた段階では、いずれも美しい影像になってるなと思っていたのですが、編集された番組を見ると、パークハイアットと青龍の影像が特に印象に残るものになっていました(写真はパークハイアット)。両者に共通するのは、ホテルからの眺望景観のすばらしさです。いうまでもなく、この眺望景観という景色を一望にして見るという楽しみ方は、近代になって生まれたものですが、TV画面などの切り取られ方ではとりわけ美しく見えるようになったし、それがこうした施設の最大の魅力になってきたのだということを、改めて見せつけられました。竹中が手がけたパークハイアットの和モダンのデザインもすばらしいのですが、その中からの眺望景観にはかなわない感じです。

 一方で、丸福樓やunknownの魅力は、あくまでもモノなのです。そこにあるタイルや幾何学模様の装飾、あるいはそれらから構成される空間が美しいのです。でもその美しさは、あくまでそれを見たり感じたりする人間と、見られるモノたちの関係の中で生まれるものなのですよね。アフォーダンス理論ではないですが、われわれはその関係が結ばれるその瞬間にモノから何ものかを受けるのです。今は客室として使われている丸福樓の部屋にちりばめられたライトやマッキントッシュのカケラのような装飾は、その場にいて初めて楽しむことができるものなんだなと、改めて思いました。こうした「現場だからの魅力」というのは、影像の時代に伝えることは難しいのですよね。



 
605-0817 京都市東山区大和大路松原下ル弓矢町37
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