昨日、法政大学の高村雅彦さん、建築家・北山恒さんと関康子さん、京町家の調査研究の第一人者・大場修さんなどの方々が、六録楼を訪ねてくれました。その後、北山さんらが手がけた町家の改修作品をみんなで見学させてもらいました(烏丸御池のタイポロジーハウス『住宅特集』2022年12月号 掲載)。六録楼は、木造の改修をそのまま正直にストレートに実現しただけのもの(そこに価値があると思っていますが)とは違い、北山さんの町家改修は、高い密度でデザインされたものでした。とても美しい。
町家のような伝統的な建築を改修するには、改修にどのようなデザインコードを持ち込むのかが問われることになります。そこにモダンデザインを持ち込むことができるのか。町家には数寄屋のような繊細なデザインが展開されているわけではないです。そこに繊細で整然としたバランスを求めるモダンデザインがどのように融合、調和できるのか。しかし、北山さんの作品は、そうした問いの立て方自体が違うのだということを教えてくれています。そもそもモダンデザインとは、建築の一つ一つの部分・要素に対して、何が合理的ですぐれた解決法なのかを考えていくことにその本質があります。この烏丸御池の改修も、床や壁に加える素材、階段のデザイン、そして空調の仕組みなど、改修において必要となる部分・要素について考え抜かれた解決法が与えられています(その詳細は雑誌記事やawn(architecture workshop network)を参照)。そして、それが結果的に、全体の空間に豊かさと美しさを与えている。伝統建築の改修において、モダンデザインは、調和を考えるものではなく、道具として使えるものであることを改めて実感しました。