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ポストモダン遺産

更新日:2023年7月25日

 六録楼で開催された先日の文化財修復構造技術支援機構の理事会で、久しぶりに、建築探偵(KBS京都)で知られる円満字洋介さんといろいろ情報交換したのですが、その中で彼が今、ポストモダン建築遺産が気になっているという話がおもしろかった。例えば、六録楼のすぐそばにある写真のような建築。確かに明らかに80年代に当時流行のポストモダン「風」のデザインをちりばめましたというものですね。でも、ちょうど工事現場(隈研吾設計監修のホテル+歌舞練場)から撮った写真なのでよけいそう見えるのですが、なんだか街の景観に埋もれたくたびれた建築にしか見えません。円満字建築探偵は、これもいまや建築遺産であり、おもしろいし、積極的に評価したいと言うのです。

 建築遺産をどのように定義して、何を評価するのか。かつての文化財建築とは異なり、いまや混沌としています。文化遺産とは、「その国や地域またはコミュニティの歴史・伝統・文化を集約した象徴的な存在」と一般的には定義されています。ここで歴史・伝統・文化は、評価する主体によってその評価は分かれます。バブルの象徴ともされるポストモダン建築をどう評価するかも、見方によって全く異なるものになるでしょう。それでも、その多様な評価とは別に、表われた歴史的事象について、それを集約し、あるいは象徴したもになっているのであれば、そのことを文化遺産として評価するという見方もありえるのではないかとも思います。

 写真の建物は、ポストモダン建築をリードした、特に京都でリードした高松伸などの作品からいろいろなデザインを借りています。でも、そのことは特定の建築作家の存在を超えて、一つの建築文化が象徴的に表われているとも判断できるわけです。それは、建築デザインとしての質が高いかどうかという判断(作家主義)とは別に、時代を象徴する存在としての評価を与えてもよいものなのかもしれません。

 確かにくたびれた建築に見える写真の建物も、よく見るとおもしろいです。何よりも造形に対する試みが、表層の中に閉じられておらず、建築全体におよんでいる。まさにそうしたことが、この時代の気分を表しているのかもしれませんね。



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