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トランプの古典主義

 トランプは、連邦政府が新設する建物は「人々の称賛を集める」古典主義建築が望ましいとする大統領令に署名した。トランプ1.0の時にも持ち出したものだけど、今度はもっと本気なのでないか。これは極めて興味深い。19世紀末の都市美運動の時代にバーナムが仕掛けたシカゴ博は、見事に古典主義のホワイトシティだった。でも、これは歴史の薄いアメリカだから、ヨーロッパの歴史様式をあえて持ち込むという意味があったわけだ。しかし、トランプの古典主義の主張は歴史主義と言うのとは違うだろう。自国第一主義を目指すために、世界標準様式となっているデザインから決別するべきだという主張と見るべきであろう。確かにグローバル資本主義はきらわれている、だけでなく、いろいろな綻びを実際に見せ始めている。国や民俗を越えて資本の動きを制御できる方法を造ることが、今の段階では難しいからだろう。そんな状況が見え始めてきている。建築の様式はどうだったか。経済がグローバル化されていく極めて早い段階から反歴史主義のインターナショナル・スタイルを標榜するようになっていた。そして今でもそれが前衛であることは変らない。実は、そのこと自体も改めて考えるべき時代に差し掛かっているようにも見える。

 とはいっても、イーロンマスクや孫正義の事業・投資はグローバル経済を前提としている。世界規模だからこそ、儲かる事業をやろうとしている。グローバルを拒否して儲かる経済など作れるのだろうか。だからそもそもトランプがイーロンと組むのは矛盾なのであり、そのうち分裂するだろうという見方もありえる。トランプのあまりの浅蓼、知性の欠落した軽挙妄動はいかんともしがたいし、最初からさまざまな矛盾を抱え込む。だけど、そうした矛盾だらけの中でも、彼が掲げる反グローバルは、実は時代の最前線にあることも事実のように思える。実際に、彼の言う古典主義建築が誰の手によって、どのような形で現われてくるのだろうか。

 とはいえ、作り上げてきたモダニズム・デザインは美しいのだ。今回ロサンゼルスの山火事でケース・スタディ・ハウスのいくつかが焼失したようだということを聞くと、ほんとうに悲しくなる。グローバル主義だからこそ生まれてきたものの価値も、一方で改めて考えなくてはならない。



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