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シン・いそざきろん

 田中純著の『磯崎新論/シン・いそざきろん』を読みました。磯崎の作品・言説を田中純が読み解いた、800ページを越えるというチョー難解ホークスな本を、某新聞社からの書評の依頼で読まされたのです。でも、けっこうおもしろかった。磯崎が反芸術の時代に建築を志したためアバンギャルドな、今から見ればかなり危ない思い込みからスタートして、それをどんどん深化させていき、自分がデミウルゴス(創造主)の化身なのだと行き着く過程が、しごくまっとな深化過程だったのだということが了解できました。田中純は、そこに神話の世界が入り込んでいくのを読み解くのですが、これも納得させられました。なるほど。

 でもそうなると、磯崎を建築の新しい思想を生み出した思想家だとあがめて見てきた立場はどうなるのでしょうか。そうなんですけど、たとえ神話だったのだとしても、その神話にはわれわれを揺さぶるすごみ、みたいのがあったのですよね。そのことも改めて認識させてくれる「シン・いそざきろん」なのです。それにしても、そうしたすごみをきかせて啖呵をきるような建築家(歴史家でもいいのだけど)が今いるのだろうか。虚勢でもいいから強い主張がないと、建築の価値はますます軽んじられていくことになるのではないかと思うのですが。



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